世紀末覇者、ハサンさんとイスラム

──時は世紀末、超大国による世界大戦によって荒廃した世界に、両超大国を撃破することで平和を勝ち取った男たちがいた。その男たちの名は──

玉藻ちゃん
なんかの某世紀末漫画の副題みたいですねぇ。世紀末って言っても、6世紀末ですけど
凛さん
では、栄えある救世主こと、世紀末覇者(6世紀末)は、この方です!

玉藻ちゃん
いやーん、ケン○ロウさま、って、ハサンさんじゃないですか!

ハサンさん

「ども、なんか呼ばれるらしいので、天井裏に潜んでいたんですけども・・・」

玉藻ちゃん
ハサンさんが世紀末覇者(6世紀末)だったんですか?

ハサンさん

「さあ? 身に覚えはないんですが……」

凛さん
あとでわかるからいいのよ、では前置きはこのくらいにして、始めましょうか

東ローマ帝国とササン朝ペルシャの最終決戦

凛先生

「というわけで、解説を始めるわね。前々回は東ローマ帝国、前回はササン朝ペルシャについて語ったわね。いよいよ両超大国が激突します」

玉藻ちゃん
玉藻推しの東ローマと、玉藻を信仰する(?)ペルシャ。いやーん、玉藻ちゃんを巡って争わないで! この身はすでにご主人様のものなんですから!

凛先生

「別にあんたを巡って争っていたわけじゃないわ。アケメネス朝の後継者を自称するササン朝ペルシャの狙いは、豊かなシリアとエジプトだった。もともとアケメネス朝の領土でもあったしね」

玉藻ちゃん
エジプトはクレオパトラさんの頃からの、ローマ帝国の富の象徴だったわけですしね

凛先生

「ホスロー1世の後を継いだホスロー2世は、ユスティニアヌス帝の死後、混乱によって弱体化した東ローマ帝国に侵攻を開始。東ローマはシリア、パレスチナを奪われ、そしてついにエジプトを失います」

玉藻ちゃん
嗚呼・・・これで世界帝国から完全に転落ですね

凛先生

「キリスト教化されてた東ローマ帝国にとって領土以上に重大な問題は、聖遺物であるキリストが磔になった十字架を奪われたことだったわ。帝国の権威は地に落ち、首都コンスタンチノープルにもホスロー2世率いるペルシャ軍が迫り、東ローマ帝国は危機的な状況でした」

凛先生

「この状況で現れたのが、ユスティニアヌス時代に征服したカルタゴ出身の皇帝イラクリオスね。彼は現状を市民に説明し、ローマ時代からの福祉政策である〝パンとサーカス〟を停止。市民から募兵と借財を募ります」

凛先生

「資金と兵力を補充したイラクリオスは一か八かの賭けに出ます。首都に迫る敵軍に対し、捨て身のカウンターパンチを繰り出すことを決意したのです。ペルシャの首都侵攻を計画したのでした」

玉藻ちゃん
ええ! でも敵は東ローマの首都に迫っているんですよね? 大丈夫なんですか?

凛先生

「首都コンスタンチノープルは、ローマ帝国の末期にその技術の粋を結集して築かれた大城壁があります。守りはこれと市民らに任せて、イラクリオネスは自らペルシャの首都に向けて進軍します。6年にわたる大遠征でした」

現存する三重城壁(ウィキペディアより)

玉藻ちゃん
コンスタンチノープルの有名な三重城壁、五階建てのビルに相当する進撃の○人並みの大城壁で、確かに容易には突破できそうにはないですね。にしても東西超大国の皇帝が兵を率いて、相手の首都を攻め合うなんて、確かに世紀末的ですね

凛先生

凛「苦難の末ペルシャの首都近くまで進軍したイラクリオネス率いる東ローマ軍は、ニネヴェの戦いでペルシャ軍を破ります。権威が失墜したホスロー2世は殺害され、東ローマとペルシャの間では和平が締結されます。東ローマはシリアにパレスチナ、そしてエジプトといった失地を回復し、聖なる十字架も返還されます」

玉藻ちゃん
でもまたすぐに戦争が始まるんでしょう?

凛先生

「ところがそうはならなかった。両超大国を撃破することによって、中東の平和を確立した人々がいたの。それが現代まで中東の主役の座を占める勢力、イスラムよ」

玉藻ちゃん
ほえ〜、そもそもハサンさんって、イスラム教徒さんだったんですか?

凛先生

「作中で直接の描写はないけど、イスラム教の伝承に残る暗殺者集団ね。あまりイスラム系のサーバントは登場しないでしょうから、イスラム圏の代表として扱うわ」

ハサンさん

「そういうことなら喜んで・・・身に余る大任、光栄です」

中東の主役イスラムの興り

凛先生

「東ローマ帝国とササン朝ペルシャの争いのため、貿易品はアラビア半島を経由して運ばれることになり、その中心地であるメッカは栄えたわ。この街に生まれたクライッシュ族のムハンマドは、唯一神アッラーの言葉を授けられた預言者であると自覚し、イスラム教を唱えます。富の独占を非難する、平等意識の強い宗教です」

ハサンさん

「実際に我らの平等意識は高いですよ。金利をとってはいけないとかね」

玉藻ちゃん
確かにハサンさんなら、無利子でお金を貸してくれそうです。どこに逃げても取り立てに来そうですけど

凛先生

「富を独占するメッカの大商人に非難されたマホメットは、622年にメッカからメディナヒジュラ(聖遷)し、イスラムの共同体(ウンマ)を建設します」

玉藻ちゃん
覚え方は、無事(62)逃(2)げれたよ、メディナにヒジュラ

凛先生

「メディナを中心に信者を増やしたマホメットは、無血で故郷メッカを征服。カーバ神殿をイスラムの聖殿に定め、アラビア半島の統一を続けます。このころ通商を巡って、東ローマ帝国とも対立関係となります」

ハサンさん

「我々が対等な通商を望んでいたのに、東ローマが受け入れてくれなかったのです」

玉藻ちゃん
カーバ神殿はgoogleのストリートビューで見たことありますけど、すんごい大神殿ですね。一度は行って見たいですが、イスラム教徒でなければ、行けないみたいですけど

凛先生

「マホメットの死後の混乱を乗り切り、教団はアブーが引き継ぎます。そんな最中、砂漠の民達から使者が訪れます。『ササン朝の長年の重税に苦しんでいます。イスラムに改宗するので、一緒に戦ってください』と」

ハサンさん

「承知いたしました」

玉藻ちゃん
承知いたしました、じゃないですよ。確か超大国の東ローマ帝国と、争っていたんですよね? 加えて超大国ササン朝ペルシャと争うなんて、ありえないですよ

凛先生

「でもそんなの関係ねー!」

玉藻ちゃん
うわ、びっくりした。急に大声出さないでくださいよ

ハサンさん

「はは、我らには神がついていますから、大丈夫です。それに帰依しようという同胞を見捨てられませんから」

凛先生

「教団はササン朝とも戦端を開きます。そして当時の二大超大国と、二正面戦争に突入します」

玉藻ちゃん
本当にやっちゃったんだ。信仰って、すごい

凛先生

「シリアの要衝ダマスカスがイスラムの手に落ちたと知った東ローマ皇帝イラクリオネスは、大軍をシリア奪還のため差し向けます。兵の多さも装備の質も、間違いなく世界最強の軍団だったでしょう」

凛先生

「対してイスラム軍は東ローマの大軍を、補給の難しい奥地に誘い込みます。その際、撤退した領土から徴収した税を異教徒達に返還したため、後に彼らの支持を得ることとなります。ヤルムークの地で、両軍は激突します。兵力差は10倍以上、イスラム側が劣勢だったとされます」

玉藻ちゃん
絶望的な戦力差ですね。しかもローマの戦術を引き継ぐ東ローマは戦術面でも上のはずですよね

凛先生

「でもそんなの関係ねー!」

玉藻ちゃん
うわ、びっくりした。もう、大声出さないでって言ってるでしょう!

凛先生

「強力な信仰心を持つイスラム軍は6日にわたる激戦に耐え続けます。そしてイスラム軍には、マホメットに〝神の剣〟と称された猛将ハリドがいました。ハリド率いる騎兵は、激戦の末、左翼の東ローマ騎兵をついに撃破。側面からも攻撃を受ける形になった東ローマ軍は壊滅的打撃を被り敗退。戦いはイスラムの勝利に終わります」

玉藻ちゃん
せめてイラクリオネスさんが直接指揮していたら、結果は違っていたでしょうに

凛先生

「シリアにパレスチナ、そしてエジプトはイスラムによって占領され、イスラム教化されます。イラクリオネスはこれを嘆き『シリアよさらば、なんと美しい国よ』との言葉を残したとされています」

凛先生

「続いてニハーヴァンドの戦いで、ササン朝ペルシャの大軍を撃破、642年のとです。これによってササン朝は事実上滅亡します。イスラムの勢力はペルシャまで広がり、ペルシャの高度な知識を手にいれて、のちのイスラム文化繁栄の礎を築くのでした」

玉藻ちゃん
無(6)用(42)になったササン朝、と覚えてください。ああ、玉藻ちゃん推しの東ローマは敗退し、玉藻ちゃんを信仰(?)していたササン朝は滅亡、無常を感じますね

ハサンさん

「歴史とはいえなんだか申し訳ありませぬ」

凛先生

「いいのよ。勢いに乗ったイスラムは、その後も大遠征(ジハード)を続け、地中海沿いにアフリカを征服。さらに西ゴート王国を滅ぼして、スペインまで支配下におきます。ちなみに今まで中東を支配したペルシャやマケドニア、ローマといった王朝はインド=ヨーロッパ系でしたが、イスラムの出現によってついにアラブ人達が中東の主役となりました」

玉藻ちゃん
現代では中東といったら、その多くがアラブ人の国ですからね

凛先生

これでイスラムの出現についての説明は終わり。試験で出やすいのは、圧倒的にニハーヴァンドの戦いね。あとはイスラム教の成立のあたり。ちなみに指導者を巡る争いが、現在のスンニ派とシーア派の分裂の原因となっています」

玉藻ちゃん
スンニ派とシーア派ってよく聞きますけど、どういう違いがあるのですか?

凛先生

「簡単にいうと、選挙や実力で指導者を決めるのがスンニ派。あくまでマホメットの血を受け継ぐものが指導者になるべきだと主張するのがシーア派ね。シーア派の王朝だけ試験に出るので、そこけ覚えておけばいいわ。ファーティマ朝とブワイフ朝とサファヴィー朝の三つね」

凛先生の要点まとめ

マホメット622年にメッカからメディナヒジュラ(聖遷)し、イスラムの共同体(ウンマ)を建設。

ニハーヴァンドの戦いでササン朝ペルシャは事実上滅亡。東ローマはシリアとエジプトを永遠に喪失。

選挙や実力で指導者を決めるのがスンニ派。マホメットの血を受け継ぐものが指導者になるべきだと主張するのがシーア派。王朝はファーティマ朝ブワイフ朝サファヴィー朝の三つ。

 

玉藻ちゃんの年号ゴロ合わせ

メディナにヒジュラは622年。

覚え方は、無事(62)逃(2)げれたよ、メディナにヒジュラ

 

ニハーヴァンドの戦いは642年。

無(6)用(42)になったササン朝。

ササン朝は滅亡しますが、東ローマはしぶとく1000年近く残ります。

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です